学校現場で使用される1人1台端末の導入・整備に関わる場合、児童生徒が安心して端末を利用する事ができるようキッティングを行うことになります。
今回はキッティングの基礎を中心に、児童生徒が使用する端末に関するポイントをまとめてみました。
キッティングの基礎【GIGAスクール端末編】
1. キッティングとは
パソコンなどの導入時に実施するセットアップ作業のこと。
必要なアプリケーションのインストールや社内ネットワークへの接続など、ユーザーがすぐに使用できる状態にすること。
パソコンの新規導入時の初期設定だけでなく、パソコンの入れ替えやWindows等のOS移行時にも、データ移行を含めた同様の設定作業が必要になります。
GIGAスクールでは、主に端末の導入時と年度更新の際にキッティングを実施します。
キッティングは、一般的に以下のような手順で実施します。
①端末の電源を入れる
②ログインユーザを作成する
③ホスト名やIPアドレス等を設定する
④ネットワーク接続の設定をする
⑤セキュリティ設定をする
⑥動作状況を確認する
⑦ラベルを貼り付ける
学校内でキッティングを実施する場合、膨大な台数を1台ずつ手作業で設定を行うよりも、「クローニング」という方法が効果的です。
クローニング:
事前にコピー元となる端末を作成し、そのコピー元の端末の情報を複数の端末に複製していく方法
2. Chrome book(Chrome OS)のキッティングについて
2-1. ①Google Workspace for Educationの初期設定
Chrome bookはキッティング前にGoogle Workspace for Educationの初期設定が必要です。
キッティング作業を事業者へ委託する場合、申し込みや開設は教育委員会が行い、事業者へは構築に必要な情報を伝えて作業を依頼する方法が一般的です。
2-2. ②Chrome bookの初期設定
Chrome bookの初期設定はシンプルであるため、授業で教員が指示しながら生徒が各自で行うことも可能です。
OSの更新と端末の登録だけで、1台あたり数分程度で終了します。
1.電源を入れる
2.キーボードを「日本語」か「英語」か選択する
3.ネットワークを設定する
4.Googleアカウントを入力する
3. Apple(iPad)のキッティング
Apple(iPad)のキッティングは、ID・端末・アプリを一元管理できる「Apple School Manager」とMDM(モバイルデバイス管理)を使用します。
※MDM:端末を一元に管理・運用したり、セキュリティを維持・強化したりできるソフトウェアのこと。
3-1. ①事前準備
キッティング前の事前準備として、Apple School Managerへの登録・設定をしてIDを作成する、MDM設定を行いネットワーク設定を行う必要があります。
Apple School Managerに登録することでiPadのMDMへの自動登録や、Apple IDの一括作成やアプリケーションなどのコンテンツの一括購入・管理が行えるようになります。
MDMはiPadの管理と運用に必要です。
3-2. ②キッティング
Apple(iPad)のキッティングは、主に以下のような手順で実施されます。
1.インターネット接続により、MDMでの事前設定内容を端末に反映させる
2.端末へアプリケーションの一括インストールを行う
3.端末固有のデバイスIDでサインインする
4.端末と共にID・初期パスワードを配布し、一度だけ利用者IDでサインインする
4. Microsoftのキッティング
Microsoftでは、GIGAスクール対応端末を導入するユーザーを対象に無償の端末展開サービスとして「GIGAスクールWindows PC導入展開パック」を展開しています。
これは、クラウドサービスを利用することで、キッティングが簡単に完了するサービスです。
4-1. ①クラウドを設定する
教育委員会がテナントを取得し、事業者にユーザー情報を提供します。
事業者は提供されたユーザー情報を基にIDリストを作成し、生徒のアカウントをテナントに登録します。
その後、事業者がMicrosoftのMDMサービス「Intune for Education」に端末管理のための設定を行います。
4-2. ②初期設定ファイルを作成する
校内のWi-Fiネットワーク設定を行い、MDMの端末登録を自動化するための初期設定ファイルを作成します。
端末をMDMに登録した後は、端末の電源を入れ、USBメモリを挿入するだけで各種の設定が自動で行われます。
5. フィルタリングの設定
児童生徒が安全に端末を使用することができるよう、児童生徒用の端末にはフィルタリング設定を行うことが望ましいです。
フィルタリングとは、主に未成年者の違法・有害なウェブサイトへのアクセスを制限し、安心してインターネットを利用できるよう手助けするサービスのことです。
フィルタリングを事前に設定しておくと、児童生徒がアダルト系やギャンブル系などの有害サイトにアクセスする危険を回避できます。
フィルタリングの方法は、以下の2種類に分けられます。
ホワイトリスト方式:
児童生徒にとって安全で有益と思われる、一定の基準を満たしたサイトにのみアクセス可能で、それ以外のサイトへのアクセスを制限する方法
ブラックリスト方式:
原則全てのサイトにアクセス可能だが、出会い系やギャンブル等児童生徒に有害と思われる特定のサイトへのアクセスだけを制限する方法
また、有償のフィルタリングの他に、無償フィルタリングも存在します。
無償フィルタリングとは、主にOSに搭載されているフィルタリングのことで、アダルトコンテンツのブロックを主な目的とするものです。
それ以外の有害サイトやコンテンツに関しては管理者が一つ一つ手作業でブロックしていく必要があり、手間がかかるというデメリットがあります。
6. フィルタリングを利用しない場合のリスク
フィルタリングを使用しない場合、以下のようなリスクがあります。
6-1. ①個人情報の漏洩や個人特定のリスク
悪質なサイトにアクセスして個人情報が盗まれたり、投稿した写真・文章から位置情報が漏洩するリスクがあります。
6-2. ②犯罪に巻き込まれるリスク
違法・有害なサイトにアクセスすることによって、凶悪犯罪に巻き込まれるケースもあります。
また、一見無害そうに見えてもクリックすることで高額な料金を請求されることもあり、注意が必要です。
7. まとめ・懸念点
今回はGIGAスクールで使用される端末のキッティングについてまとめました。
現状、ほぼ全ての小中学校で一人一台端末の整備が進んでいますが、フィルタリングに関しては25%の教育委員会が有償フィルタリング未導入とのデータもあります。
また、YouTube等授業での活用が可能なコンテンツを用いて無関係な動画を閲覧する児童生徒がいるなど、フィルタリングだけでは対応しきれないといった課題も存在するようです。
現状、詳細なフィルタリング設定を全ての児童生徒用端末に行うことは、時間・費用の面からも現実的ではありません。
しかし、利用者と端末整備者が異なる場合、利用者から端末の仕様以上の要求をされる可能性もあります。
設定でできること・できないことを明確にして伝えること、また、教員や児童生徒にITリテラシー教育を行い、ルールを守って使用しなかった場合のリスクを周知していく必要があると考えます。
参考資料
・フィルタリング(有害サイトアクセス制限サービス)をご存じですか?/総務省
2023年10月4日閲覧
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/filtering.html
・Chromeデバイスを登録する
2023年10月4日閲覧
https://support.google.com/chrome/a/answer/1360534?hl=ja
・GIGAスクール時代の年度更新、キッティングのコツ
2023年10月4日閲覧
https://kdc-ict.com/blog/kitting/p5439/