1年目のインフラエンジニアに必要なスキル | データモデリングとは?

データモデリングは、ビジネス要件に必要な情報を整理してビジュアル化し、データ検索を容易にする、システムがデータの精度を保つために必要な概念です。

特にインフラエンジニアやデータベースエンジニアの方など、データに深く関わる職種では重要なスキルであり、これからエンジニアとしてキャリアを築いていくためには避けて通れません。


本記事では、エンジニアに必要なスキルの一つであるデータモデリングについて分かりやすく解説します。

1. データモデリングとは


データモデリングとは、データの流れを図式化する手法で、具体的にはシステムを設計する際のデータ構造や関連性、ルールの定義を視覚的に表現するためのプロセスです。

まずは、データモデリングの必要性を理解し、続いてデータモデリングに必要となる「ER図」、「スキーマ」、「正規化」について深く掘り下げて理解を深めていきましょう。

1-1. データモデリングの必要性

データモデリングは、情報システムの開発における重要な工程であり、以下のような役割を果たします。

効率的なシステム開発

データモデリングを通じて、システム内のデータの流れや関係性を視覚的に理解することができ、システム全体のビジョンが明確になります。

これにより、開発者は設計段階で問題を事前に洗い出し、効率的なシステム開発の計画を立てることができます。

データの整合性の確保

データモデリングにより、データの重複や矛盾をなくして、データベースの整合性を保てるため、エラーや不正確な情報による問題を避けることができます。

コミュニケーションツール

データモデリングは開発者とステークホルダー間のコミュニケーションツールとしても機能します。

開発者がステークホルダーにシステムの構造や動作を説明するための情報としてデータモデルを活用することで、ビジュアルでわかりやすく表現され、システム要件の理解を深めることができます。

システムのスケーラビリティ

システムのデータの量や複雑性が増えて拡張が必要となった場合、適切にモデリングされたデータベースはこれらのニーズに容易に対応することができます。

これらの理由から、データモデリングは、システム開発の全過程において重要な役割を果たします。

2. ER図の作成


エンティティ・リレーションシップ図(ER図)は、データモデリングの初期段階で作成される視覚的なツールです。

ER図は、データエンティティ(例えば顧客や商品など)とそれらの間のリレーションシップを表現し、ER図を作成することで、データの全体的な流れを理解しやすくなります。


また、ER図はデータベースの初期設計で重要な役割を持っており、エンティティ間の関係性を明確にすることで、設計者はデータベースの詳細設計書をスムーズに作成することができます。

3. スキーマの作成

スキーマは、データベースの構造を定義したもので、データベース設計やシステム開発における重要な工程です。

スキーマを作成する際には、データベース内のテーブル、フィールド、レコード、およびそれらの間の関連性を定義し、これらのデータがどのように格納、関連付けられ、利用されるかの全体像を形成します。


また、スキーマはデータの型、制約、リレーションシップを規定しており、これにより、データの品質と整合性が維持され、データの標準化を実現しています。

効率的なスキーマ設計は、リソースの効率的な使用が可能となり、データの検索、更新、削除といったクエリのパフォーマンスを向上させるため、インフラエンジニアの腕の見せ所です。

4. 正規化


正規化とは、データの重複を避け、データの一貫性と整合性を確保するためのプロセスです。

正規化にはいくつかのレベル(1NF、2NF、3NF)があり、それぞれが特定のルールを満たす必要があります。

以下は、正規化の各レベルの条件です。

4-1. 第一正規形(1NF)

第一正規形は、データベース設計の正規化の初期段階で、以下の条件を満たす必要があります

1.各レコード(行)が一意であること。
  これは通常、一意な識別子(主キー)を使用して達成されます。

2.各属性(列)が原子的であること。
  つまり、各セルには一つの値のみが存在し、リストや配列などの複数の値を持つことはありません。


これらの条件を満たすために、多値を持つフィールドや複合フィールドを分割し、主キーを導入して行の一意性を確保します。

これにより、データの整合性が保たれ、データの検索、挿入、更新、削除が容易になります。

4-2. 第二正規形(2NF)

第二正規形の主な目的は、データの冗長性を排除することです。

部分的な依存関係が存在すると、同じ情報が複数の行にわたって繰り返される可能性があります。


第二正規形は、データベース設計の正規化の次の段階で、以下の条件を満たす必要があります

1.第一正規形を満たしていること。

2.全ての非キー属性が主キーに完全関数従属していること。
つまり、非キー属性は主キー全体に依存し、その一部に依存することはありません(部分的な依存関係が存在しない)。


例えば、商品の購入履歴を保存するテーブルがあり、そのテーブルの主キーが「顧客ID」と「商品ID」で、その他のフィールドに「商品名」があるとします。


この場合、「商品名」は「商品ID」に部分的に依存しており、第二正規形を満たしません。

このテーブルを第二正規形にするためには、「商品名」を別のテーブルに移動し、「商品ID」をそのテーブルの主キーとすることにより、部分的な依存関係を解消しています。

4-3. 第三正規形(3NF)

第三正規形は、データベース設計の正規化の最終段階で、以下の条件を満たす必要があります

1.第二正規形を満たしていること。

2.すべての非キー属性が他の非キー属性に対して推移的に依存していないこと。
つまり、非キー属性間に依存関係が存在しないこと。


第三正規形の主な目的は、データの冗長性と不整合性をさらに排除することです。

これにより、データの更新時に不整合性が生じる可能性を減らし、データの整合性を保つことができます。


例えば、従業員テーブルがあり、そのテーブルの主キーが「従業員ID」で、その他のフィールドに「部署名」と「部署の所在地」があるとします。

この場合、「部署の所在地」は「部署名」に推移的に依存しており、第三正規形を満たしません。


このテーブルを第三正規形にするためには、「部署名」と「部署の所在地」を別のテーブルに移動し、「部署名」をそのテーブルの主キーとすることにより、推移的な依存関係を解消します。


これらの正規化を行うことで、データが一元管理され、一貫性の欠如によるエラーや誤解を防いだり、データの更新、挿入、削除の操作が簡単になり、正規化されていないデータベースに比べて全体的なパフォーマンスが向上します。

5. まとめ


本記事では、エンジニアのキャリアに必要なスキルの一つであるデータモデリングの重要性と、データモデリングに必要となる「ER図」、「スキーマ」、「正規化」を解説しました。


データモデリングを学ぶことで、ビジネスの要件を満たすための強固なデータ基盤を構築する能力を身につけることができます。

さらには、データの整合性を保ち、システムの性能を向上させることが可能となります。


これらのスキルは、エンジニアとしてのキャリアを築く上で重要なものであり、データモデリングを理解し適用することで、エンジニアとしての価値を高め、大きな差別化を生むことができるでしょう。

皆さんのキャリアにおいて、データモデリングのスキルを活かして、より効率的で効果的なシステム開発を目指してみてください。