クラウド時代とこれから

クラウドサービスの市場はどんどん成長しており、今後もさらに成長すると言われています。

生産性の向上、業務の効率化を目的としたIT投資を行う企業も増えると予想されています。


企業だけでなく、政府もクラウドサービスを利用した業務を行っています。

政府の動きについても紹介していきます。

1. ガバメントクラウド


https://project.nikkeibp.co.jp/jpgciof/atcl/19/00003/00013/?SS=imgview&FD=1153259116


1-1. ガバメントクラウドとは

政府や地方自治体が共同で行政システムをクラウドサービスとして利用できるようにした「IT基盤」のことです。

1-2. ガバメントクラウド移行

地方自治体によるガバメントクラウドの活用について

①先行事業(2021~2022年)

いくつかの地方自治体に先行でガバメントクラウドを活用してもらい、課題や手法を整理していきます。

②移行支援機関(2023~2025年)

地方公共団体の期間業務システムが、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行を目指すこととし、国はそのために必要な支援を積極的に行います。

1-3. デジタル庁が、「ガバメントクラウド」に採用

「Amazon Web Services(AWS)」

「Google Cloud Platform(GCP)」

「Microsoft Azure」

「Oracle Cloud Infrastructure」

の4つです。

1-4. ガバメントクラウドの認定基準

ガバメントクラウドの認定基準となったのは、下記の要件に当てはまっていることです。


①不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて、最新かつ最高レベルの情報セキュリティが確保できること

②クラウド事業者間でシステム移設を可能とするための技術仕様等が公開され、客観的に評価可能であること。

2. ガバメントクラウドのメリット

ガバメントクラウドのメリットを4つ紹介します。

利用する各自治体だけでなく、住民にもメリットがあります。

①構築・運用コストが削減できる

サーバーやネットワーク機器などの準備が不要になり、導入コストを抑えることができます。

また、その後のサーバー監視やメンテナンスといった作業も不要になるためランニングコストの削減につながります。

②迅速なシステム構築・拡張が可能になる

システム負荷やアクセス数の増加などへの対応も柔軟に対応可能になります。

また、行政手続のオンライン化やサービスのワンストップ化などが実現しやすくなり、新しいサービスを住民へスピーディーに提供することが可能になります。

③効率的な庁内外のデータ連携

クラウド上でデータが一元管理されるようになるため、政府、自治体間のデータ連携が用意になります。

これまで煩雑だった行政手続きも簡略化させることができるので、住民や職員の負担の軽減にもなります。

④セキュリティが強化される

これまで各自治体が個別で行ってきたセキュリティ対策は、ガバメントクラウドがまとめて行うことになるので、専門知識のない団体でも、最新のセキュリティ対策が可能となります。

3. DX推進について

世界中でIT、IoT、AI、RPAなど最新テクノロジーを駆使した業務効率化が進む一方、デジタル技術を駆使した新しいイノベーションを生み出すデジタルディスラプターも多く生まれています。

デジタルディスラプターに対抗するには、デジタル技術を駆使したDXの推進が必須です。


このようなデジタル化の波は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とも呼ばれ、今後の競争を勝ち抜くには必要条件になります。

業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出だけでなく、レガシーシステム(過去の技術や仕組みで構成されているシステム)からの脱却や企業風土の変革を実現させることを意味します。

デジタルディスラプター:

一般的にはデジタル技術を活用して既存の業界の秩序やビジネスモデルを破壊する企業のことを指します。


例:

・Uber…

自転車を所有している運転者と、移動したいユーザーをマッチングさせて、手数料を収益としています。今までにないビジネスモデルとして成功した一例です。

・Netflix…

従来は動画コンテンツを購入したり、ショップでDVDを借りて、動画コンテンツを楽しむのが一般的でした。

Netflixはインターネットをインフラとして、サブスクで見ることができます。

インターネット環境があれば楽しむことができるので、店舗を持たなくて済み、低価格でサービスを提供できます。

Netflixも動画コンテンツ業界に大きな影響を与えたデジタルディスラプターと言えます。

3-1. デジタルディスラプターが顧客にもたらしている価値

・コストバリュー(価格の低下)

・エクスペリエンスバリュー(利便性の向上)

・プラットフォームバリュー(ネットワーク効果、コミュニティーの価値)


既存の企業は、3つの価値+自社の強み、で独自の優位性を構築していく必要があるでしょう。

4. 2025年の崖問題

経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートの中でも明記されている「2025年の崖」について説明します。

経済産業省が2018年「2025年の崖」というレポートを発表し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を阻害するものとして、2025年の問題点を挙げています。

そのキーポイントとして、レガシーシステムの存在があります。


https://workit.vaio.com/2025-no-gake/


「2025年の崖」の損失と内容


https://www.gmosign.com/media/work-style/post-0086/


■担い手の高齢化

メインフレームについて知っている人が退職・高齢化し、古いプログラム言語を知る人材の供給が困難になります。

■先端IT人材の不足

IT人材不足が約43万人まで拡大します。

■レガシーシステム問題

レガシーシステム問題とは、既存基幹システムの「老朽化・複雑化・肥大化・ブラックボックス化」することで多様化するビジネスモデルに対応できなくなってくることです。

基幹システムを21年以上使用している割合が、2025年で6割になります。

このままの状態では2025年問題の損失はかなり大きいことが分かります。

レガシーシステムを使い続けることの主なデメリットです。

4-1. ユーザー企業

・SIへの依存度が進行

・DXで敗者になる

・負債を抱える

・セキュリティリスクが上がる

・災害リスク

4-2. SI企業

・レガシーシステムの維持管理にリソースをとられる

・新しい技術を習得できない

■補足

「SAP ERP」の保守サポート終了についてSAP社の「SAP ERP」の保守サポートが2025年に終了すると言われていたのが、2027年の終了に延期になりました。

「SAP ERP」はバージョンアップを繰り返してきた結果、システムが肥大化してしまったのです。

5. 「2025年の崖」から落ちないためにできること

~「システム標準化」と「DX推進」が必要である~

5-1. 「システムの標準化」を考える

ユーザー側

非競争領域の業務をシンプル化し、システムに対して過剰なカスタマイズをせずにコストを下げることが必要です。

また、DX活用にリソースを投入し、成長していくことができれば、GDPもプラスになるでしょう。

SI企業側

標準化したシステムをSaaSとして販売し、受託業務から脱却し、新規事業やDX領域にチャレンジし、うまく機能すれば、明るい未来に向かっていきます。

5-2. 「DX推進」に向けた取り組みについて考える

DX推進に向けた対応策について

・DX推進指標を使って課題を把握し、今後の行動計画を立てる

「DX推進指標」とは、経済産業省が配布している『「DX推進指標」とそのガイダンス』のことです。

自社のDX推進状況を自己診断できるので、自社の取り組みの現状やあるべき姿を認識・共有し、必要な行動をしていきましょう。


https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/ug65p90000001j8i-att/dx-suishin-guidance.pdf

・現行のシステムを調べ、不要な機能を削除する

複雑化した現行システムを精査し、不必要な機能を削除しましょう。

不必要な機能があることで、コストと時間を無駄にしてしまいます。

調査することでブラックボックス状態も解消されます。

・公的支援を利用して新システムを導入する

中小企業の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツールの導入を支援するIT導入補助金があります。


https://www.it-hojo.jp/first-one/


6. 知っておくべき用語

ISMAP(イスマップ)とは

政府が活用するクラウドサービスのセキュリティを評価する制度のことです。

クラウド・バイ・デフォルト原則とは

政府の「ガバメント・クラウド実行計画」に定める「原則として、クラウド・サービスを第一候補とする」という方針のことです。

コンテナとは

仮想環境の一つで、従来の仮想マシン(VM)では必要だったハイパーバイザーやゲストOSなどを不要とし、軽量に仮想環境を作ることができます。


https://www.idcf.jp/words/container.html


ハイパーバイザーとは

コンピューターを仮想化するためのソフトウェアのことです。

7. クラウドファースト・クラウドネイティブの浸透

クラウドの普及が本格化し始めて、「クラウドファースト」という言葉が登場しました。

現在、クラウドファーストの考え方に沿ってシステム導入をする企業が増えており、政府も積極的に推奨しています。

推奨する理由に、事業継続計画(BCP)と災害復旧(DR)対策、セキュリティが強固、ビジネスチャンスを逃さないため、などがあります。

■クラウドファーストとは

クラウドサービスを優先的に利用するという考え方のことです。

■クラウドネイティブとは

クラウドの利点を徹底的に活用するシステムのことです。

クラウドネイティブの定義には、「マイクロサービス」「サービスメッシュ」「宣言型API」「イミュータブルインフラストラクチャ」などの用語が登場します。

■マイクロサービスとは

システムをこまかい「サービス」に分解して、それぞれのサービスと連携させてシステムを機能させるというものです。

サービスを分解することで負荷分散や機能変更も可能になります。


それぞれのサービスはそれぞれのコンテナに割り当てられ、そのうえで稼働します。そのコンテナ間の通信などを管理するのがサービスメッシュです。

そして、コンテナ間の連携はAPIを介して行われるため、「宣言型API」が用いられることになります。


イミュータブルインフラストラクチャは、一度構築するとパッチ適応をせずに固定化することを意味しています。

構築後に、変更が必要なときには、すでに変更がされているインフラを新しく構築して全体を切り替えるという意味になります。

8. まとめ

クラウド時代、政府がどんな方針で動いているのか知ることができました。

また、課題点や今後どのように動くべきなのか、何が必要なのかが見えてきたので、クラウド時代に対応していける人になりたいです。