クラウドサービスについて

クラウドとは、クラウドコンピューティングの略で、ユーザーがサーバーやネットワークなどのインフラやソフトウェアを持たなくてもインターネットと介してサービスを受けることが可能になる仕組みです。

自分のコンピューターにソフトウェアをインストールせず、ウェブブラウザなどを使ってシステムを利用します。

ソフトウェアを動作させるITリソースやサービスはすべてクラウドベンダーが所有しており、ユーザーはそれらをインターネット経由で利用します。


クラウドサービスでは、ソフトウェアの場所やデータ保管先はインターネット上の見えないところにあるので、システムの構成図を表す際に、雲(=クラウド)のマークを使っていたため、「クラウド」と呼ばれるようになったと言われています。

1. クラウドの普及について


1-1. ■オンプレミスからクラウドへ⁉

クラウドが普及した背景には、インターネットの普及に伴い新たなビジネスモデルが登場したこと、扱うデータ量が増大したことなどが背景となっています。

クラウドサービスが登場するまでのITシステムは必要な設備(物理サーバーを自社内に設置)を整えて独自のシステムを構築することが主流でした。

(※「クラウド」と区別するために従来からあるシステムは「オンプレミス」と呼ばれています。)


しかし、初期費用や運用負荷が大きかったのも課題としてありました。

そんな課題を解消するようなサービスとして、ITコストの削減かつより柔軟で運用負荷の少ないシステム構築として「クラウド」技術が広まっていったのです。

導入のための準備がほぼ必要なく、複数人のユーザーで同時に作業ができ、運用もクラウドサービス提供事業者が行うため、非常に使い勝手の良いシステムです。

1-2. ■クラウドが注目される背景として

●働き方の変化

現在、コロナの感染拡大防止の視点から、人と人との接触を極力避けるため、在宅勤務やテレワークが一般的なものとなりました。

クラウドサービスにより、社内ネットワークに対してインターネット回線からアクセスできるため、インターネット環境が整っている場所ならばいつでもネットワークにアクセスすることができるので、働き方の多様化を実現するには欠かせないシステムです。

●インターネットビジネスの拡大

インターネットの普及により、ウェブアプリケーションやウェブサービスが企業の新しいビジネスモデルとして登場してきました。

●企業が保有する情報のビッグデータ化

ビッグデータとは、従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しいような巨大なデータ群です。データの保存するところを作成、操作、および管理できるようにするすべての技術を指します。

ビッグデータは以下の3つから構成されると定義されています。

 ・Volume(データの量)
 ・Variety(データの種類)
 ・Velocity(データの発生頻度・更新頻度)


単なるデータの大きさを示すものではなく、さまざまな要素を複合的に含んでいます。

インターネットの普及に伴い、システムが扱うデータ量も増えて従来のシステムでは対応が難しくなってきました。

「ウェブスケール」という概念があり、インターネットで扱うデータが膨大な量であり継続的に増加することを意味します。

ウェブスケールに対応しうるシステムが必要となり、クラウドの概念が必要とされるようになりました。

2. 世界3大クラウドサービス

自社で運用するコンピューターシステムをオンプレミスからクラウド環境へ移行することをクラウドシフトといいます。

クラウドシフトを進めるにあたり、クラウドサービスの比較が必要です。

後ほど、世界3大クラウドサービスの特徴についても紹介していきます。

・Amazon Web Services(AWS)
・Micorosoft Azure(Azure)
・Google Cloud Platform(GCP)


現在、3大クラウドだけで、世界の65%のシェア率を持っています。

AWSだけでも30%以上のシェアを獲得しており、世界最大のクラウドサービスです。


https://www.srgresearch.com/articles/huge-cloud-market-is-still-growing-at-34-per-year-amazon-microsoft-and-google-now-account-for-65-of-all-cloud-revenues


3. クラウドサービスの種類

クラウドサービスの種類についても知っておきましょう。

クラウドを用いたビジネスモデルは次の3つに分類されます。

クラウド事業者が提供する構成の違いを図示したものが以下になります。


https://ledge.ai/articles/iaas


クラウド事業者の責任範囲が及ばないところはユーザー側が管理でき、その分カスタマイズ性が高くなります。

しかし、構成の柔軟性と引き換えに、運用の管理や構築の負荷がかかります。

クラウドを利用する際には、目的に合わせて選択する必要があります。

3-1. SaaS(Software as a Service / サース)

ネット経由でソフトウェアやアプリケーションを利用できる仕組みです。

ソフトウェアをパッケージとして購入またはインストールする必要がないという特徴があります。

ユーザーアカウントさえあればどこからでも自由にアクセスできます。グループ内でデータやファイルの共有も可能です。

主なサービス例:Gmail、iCloud、Evernote、Slack、Dropbox、Microsoft Office365、サイボウズなど

メリット

・導入しやすい
アカウントさえあればアクセスしてサービスを利用できます
 
・コストが低い
提供されるクラウドを使用すれば環境の構築が不要であり導入コストが低くて済みます

・好きな場所、時間で利用可能
インターネット環境さえあれば利用可能です
 
・システム運用の負荷軽減
ソフトウェアの提供者側によって、セキュリティも更新してくれるので、運用管理の負担が減ります

3-2. PaaS(Platform as a Service / パース)

ネット経由でアプリを作動させるためのハードウェアOSやデータベースなどの一式を提供します。

ユーザーは手早く、コストを抑えた開発が可能になります。

ユーザーは人気のソフトを利用してその分の使用料を支払います。

主なサービス例:AWS(Amazon Web Services)、Micorosoft Azure、Google Cloud Platformなど

メリット

・コスト削減
ハードウェアやサーバー、OSを自社で用意しなくていいのでコストを抑えることができます。また運用コストも保守作業などがないので時間や人件費が削減可能です

・導入してから開発までが容易
クラウドに用意されたインフラ環境を利用することができるため、環境構築する必要がなく、導入から開発まで時間がかかりません

3-3. IaaS(Infrastructure as a Service / イアース / アイアース)

ネット経由でサーバーやストレージ、ネットワークなどのハードウェアやインフラ、アプリケーションなどを利用できます

IaaSを利用することで、ネットワーク、ハードウェアやOSを必要な時に必要な分だけネット経由で利用できます

開発環境を一から構築することが可能です。

利用するOSやサーバーなどの選択や設定が必要なのですが、カスタマイズ性は高いです。


https://www.itmanage.co.jp/column/saas-paas-iaas/


主なサービス例:Amazonが提供する「AWS」より、Amazon Elastic Compute Cloud(AmazonEC2)、Elastic Load Balancing(ELB)

マイクロソフトが提供する「Micorosoft Azure」よりVietual Machines、Load Balancerなど

メリット

・自由な環境構築
提供されるインフラのOSやネットワークを使い自由にアプリケーションや利用するプラットフォームの選択が可能です

・コストが低い
導入と運用にかかる費用が削減できます

オンプレミスだと導入時にサーバーを購入すれば数十万円かかるが、それがないので初期費用は削減できます。

サービスのメモリやCPUのスペックに応じた従量課金制を採用しております

・BCPの対策が可能
災害時などでも企業が継続して事業を行えるようにするための戦略のことです。

IaaSは利用するデータをデータセンターで保存しているため、災害時でもインターネットを介してデータセンターにアクセスすればデータを取り扱うことできます

4. 大手3社のクラウドサービスの特徴

大手3社のAmazon、Microsoft、GoogleはそれぞれAWS、Azure、GCPのクラウドサービスを展開しています。


https://www.rworks.jp/cloud/aws/aws-column/aws-entry/21354/


5. AWSについて

世界最大シェアを持つAWS。

元々はAmazonがECサービス提供のために構築・運用した自社のリソースを活かし、サービスをスタートさせました。

今では世界190カ国以上で利用されています。

他サービスと比較して、AWSのいい点は豊富なサービスと実績、高い信頼性です。

自社に合ったサービスも構築できるため、自由度が高く、より細かく設定し運用することが可能です。

特徴

・時間あたりの従量課金制
初期費用はなく、料金体系は利用した時間や通信量などで使った分だけ支払う

・セキュリティ対策や障害への備え
国際的なセキュリティ基準の規格を数多く取得しているほか、アメリカ国防総省の基準にも準拠

・安定したパフォーマンスや自動更新

・豊富なサービスで、柔軟性・拡張性が高い

デメリット

・毎月の金額変動が起こる可能性がある
従量課金制のため

・ダウンタイムに注意が必要
メンテナンスされる際、システムが一時停止される

・サービスの利用方法や個別サポートはない
トラブル発生時に自分で対応しなければならない

AWSの導入事例

・ゲームのサーバーに
ゲームは一度にたくさんの人がアクセスするため、サーバーに負荷がかかりやすい。

AWSのクラウドサーバーサービスを利用することでトラブルなくゲーム配信ができている

・オンプレミス環境の運用をAWSへ移行

・航空業界のデータ分析に
全日本空輸株式会社(ANA)では、データ分析分野のデータベースをAWSに移行しました。

運航実勢や貨物輸送の実績などを蓄積し、データ分析環境を整え、サービスの質や利便性の向上に。

6. Azureについて

Micorosoftのクラウドサービスです。

Windowsベースのクラウドであるため、Windowsとの親和性が高いことが特徴です。

オンプレミス環境でWindows Serverベースのサーバーを利用している企業は移行がしやすいでしょう。


システム開発や運用に役立つ機能を備えており、システム開発時の大容量データ管理機能のほか、仮想マシンや仮想ネットワークの構築機能や、人工知能(AI)の設計できる機能など、PaaSが得意とされています。

また、Office365や社員管理にも広く用いられているActive Directory(AD)などのMicorosoftのツールとの連携性の高さも人気の一つです。


人工知能(AI)と機械学習を組み合わせた脅威の検出機能を持つなど、セキュリティにも優れています。

従量課金制で、利用時間や利用量に比例して価格が変動します。

Azureは既存のシステムと連携させながら、クラウドサービスを検討しているユーザーによく利用されています。

7. GCPについて

Googleが提供するクラウドサービスです。

AI(機械学習)系サービスやデータ分析に強みがあります。

検索の処理や、広告の最適化など、蓄えた知識・技術を活かしてサービスを提供しています。

メリット

・ネットワークのスピードが速い
・インフラ環境が安定している
・セキュリティ面で安心できる
・データ解析サービスが充実している
・良心的な料金プラン

AWSを選ぶメリットが大きい人

・サーバーを細かくカスタマイズしたい
・一定負荷のサーバーを長期にわたって利用する

Azure を選ぶメリットが大きい人

・オンプレミス環境と連携したい

GCPを選ぶメリットが大きい人

・Google WorkspaceやGoogle API等、Googleサービスを利用してる
・サーバー負荷のピークが変動する


Google Cloudは1か月単位で自動的に継続割引があり、サーバー費用の割引メリットが大きくなります

・急激なアクセス増への対応
 突然のアクセス増があった際も即座に対応するように設計されています

・グローバル展開を行っている

・BigQueryを使いたい(低価格で大量のデータを高速にクエリを実行できる)

8. オンプレミスとクラウドの比較


https://spalo.jp/labo/it%E7%94%A8%E8%AA%9E%E5%8B%89%E5%BC%B7%E4%BC%9A/%E3%80%90it%E7%94%A8%E8%AA%9E%E5%8B%89%E5%BC%B7%E4%BC%9A%E3%80%91%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E5%89%8D%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E9%A3%9B%E3%81%B3%E4%BA%A4%E3%81%86it%E7%94%A8%E8%AA%9E/


「オンプレミス」「クラウド」両者それぞれにメリット・デメリットがあります。

コストやセキュリティ面などについて説明します。

大きな決め手となるのはセキュリティ面です。

自社内で情報システムを保有しサーバー運用を行って完結してしまうオンプレミスに対し、クラウドは外部が提供するサービスを利用することになります。

費用に関しても、オンプレミスは設備投資であるのに対し、クラウドを利用する場合はサービス提供業者に月額の利用料金を支払うのが大半です。

オンプレミスのメリット

・システムのカスタマイズ性が高い
ハードウェアからソフトウェアまで自社で保有しているので、柔軟にカスタマイズできます。

また社内システムとの連携も撮りやすく、自社の特性に合わせることができます。

・セキュリティ面での安全性が高い
自社のネットワークを使用しているため、サーバー利用者が自社内に限定され、外部の人が入りにくく、セキュリティ面で安心できます。

顧客の個人情報を扱うような企業ではオンプレミスの利用をしているところが多いです。

オンプレミスのデメリット

・導入コスト
初期費用や保守費用、サーバールームの光熱費等の管理費、人件費などの維持費も必要になってきます。

万が一の時の機器交換の費用についても自社で支払う必要があります。

・利用できるまでの期間
ゼロから設備構築をするには、長い期間を要します。

利用するまでのスピード感では、提供されているパッケージを利用するクラウドの方がはやいです。

・障害対応が必要
クラウドサービスの場合は、クラウドの提供業者が障害対応を担当しますが、オンプレミスの場合は、システム・サーバーにトラブルが起きた際にも自社で完結させなければなりません。

近年では、オンプレミスでも、障害対応などの運用を他企業にアウトソーシングしているところもあります。

クラウドのメリット

・初期費用が安くて済む
サーバー構築に必要なシステムの購入が不要なため、初期費用を抑えられます。

クラウドの料金体系は「従量課金制」のため、使用量が少ないときはコスト削減になります。

サーバーの維持管理費もかかりません。

・導入までがスムーズ
クラウドは、販売業者と契約するだけで利用開始できるので、アカウントを発行し、設定が完了次第すぐに利用できます。

・拡張性が高い
Web上で設定変更ができるため、利用するサーバーの数を増やすなどの環境に応じた変更も可能です。

クラウドのデメリット
・自由なカスタマイズができない
販売者が提供するサービスに依存しているため、自社に合わせたカスタマイズできる範囲が限られてきます。

・長期的なコストが高くなる可能性がある
使用量に応じて料金が変動するので、サイトやシステムの使用量が増えると、コストが高くなります。

8-1. 知っておきたい用語について

クラウドネイティブとは

クラウドの利点を徹底的に活用することです。

「クラウドサービスを利用してソリューションを設計すること」という考えが基本とされています。

最初からクラウドを利用してアプリケーションを実行したり、ソフトウェアを開発したりすることを前提とした考え方を指します。

サービス提供までのスピードが速くなり、収益向上や業務効率化につながるため、数多くの企業が導入しています。

クラウドファーストとは

「システム構築を行う際にはクラウドの利用を優先する」という考え方のことです。

クラウドジャーニーとは

既存のオンプレミスなシステムを離れ、「クラウド化(クラウドネイティブ化)へ移行すること」を表した言葉です。

9. まとめ

クラウドとは、から始まり、クラウドサービスの特徴などについて紹介しました。

既存のオンプレミス、今後も使われる場面が増えていくであろうクラウド、両方のメリット・デメリットについて知ることができました。

それぞれの特性を理解した上で、今後もさらに知識を深めていきたいです。