ネットワークの基礎⑦

前回、PPPについて触れてきました。

さらにPPPについての学習とその他のデータリンクについても学んでいきましょう。

1. PPP

PPP(Point-to-Point Protocol)とは、ポイントツーポイント(1対1)でコンピュータを接続してデータ通信を行うためのプロトコルです。

電話回線を使用する場合は、電話回線レベルでコネクションが確立してから、PPPのコネクションが確立します。

ISPに接続するときには、ISP側の認証は未使用にしましょう。


※装置間のやり取りのことをネゴシエーションといいます。

1-1. LCPとNCP

PPP(Point-to-Point Protocol)は、2つのプロトコルから構成されています。

LCPとNCPがあります。

・LCP(Link Control Protocol)

上位層に依然しません。「どのようにコネクションを確立するか」を定めています。

具体的には、コネクションの確立や切断、パケット長の設定、認証プロトコルの設定(PAPかCHAPか)、通信品質の監視をするかどうかなどの設定を行います。


■認証プロトコルの設定

PPPで接続するときには、資源にアクセスする前にユーザーの正当性を確認するプロセスとして通常ユーザーIDやパスワードによる認証が行われます。

PAP認証は、双方向認証と単方向認証が設定できるようになっています。

・PAP(Password Authentication Protocol)

PPPのコネクション確立時に1回だけIDとパスワードをやり取りします。

平文での認証が行われており、暗号化されていないため、セキュリティ面で危険性があります。

・CHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)

OTP(One Time Password)の使用で、毎回パスワードが変更されるため、盗聴の問題を防ぐことができます。

・NCP(Network Control Protocol)

上位層に依存します。確立されたコネクション上で「どのようにデータを運ぶか」を定めています。

例として、IP通信であれば「IPCP」としてIPアドレスの設定を行ったりします。

1-2. PPPのフレームフォーマット

PPPのデータフレームのフォーマットを見ていきましょう。

フラグはフレームの区切りを表し、通信の開始と終了を示しており、「01111110」で固定になります。

PPPは、HDLC(High Level Data Link Contorol Procedure)と呼ばれるプロトコルを参考に作られています。HDLCは、データリンク層のプロトコルの1つで相手の応答を待たずに送信することができるので伝送効率が高いです。

標準的な設定の場合、HDLCとPPPの設定は同様です。

フレームの区切りをフラグシーケンスといい、フラグシーケンスに挟まれたフレーム内部では、以下のようなフォーマットで設定をしています。


PPPデータフレームのフォーマット


フラグは「01111110」で固定です。

アドレスは、常にブロードキャストであるため「11111111」で固定です。

制御(コントロール)はHDLCで規定されている「非番号制フレーム」を表す「00000011」で固定です。


プロトコルタイプは、PPP上に乗っているデータが制御系通信(LCP,PAP/CHAP認証,IPCP)なのか、通常のIP通信なのかを示します。

例:LCP=OxC021、PAP=OxC023、CHAP=OxC223、IPCP=Ox8021 など


PPPデータは、コード、識別子、長さ、データやオプションを示します。

例:コードは、

 【LCP/IPCPの場合】Configure-Request=Ox01 接触要求、条件提示
            Configure-Ack=Ox02 接触承認
            Configure‐Nak=Ox03 条件変更要求 など

 【PAPの場合】Authenticate-Request=Ox01 認証要求
        Authenticate-Ack=Ox02 認証成功
        Authenticate-Nak=Ox03 認証失敗
          
 【CHAPの場合】Challenge=Ox01 認証ネゴシエーション開始
           Request=Ox02 パスワードハッシュ
                                Success=Ox03 認証成功
           Failure=Ox04 認証失敗


ダイアルアップPPPとは、電話回線で発呼や着信ができるようにした方式のことをいい、1990年代、家庭などのインターネットプロバイダ(ISP)に接続する手段として標準的に使用されていました。

1990年代後半の、ISDNやADSLが登場するまではダイアルアップ接続が主流でした。


また、速度や利便性に優れた光回線の普及により利用者が減っていきました。

※ダイアルアップ接続とは、コンピューターがネットワークに接続する方式のひとつで、電話回線を用いたインターネット接続方法です。

1-3. PPPoE(PPP over Ethernet)

インターネット接続サービスで、イーサネットを利用したPPP機能を提供するPPPoEが利用されている場合もあります。

「PPPoE接続」は、通常インターネット回線を利用している人は基本的に、基地局からプロバイダー経由してインターネットに接続しています。

PPPモデルを使ったインターネットを使う際の約束事で、インターネットに接続する時にID、パスワードを入力する必要があります。

・IPoEとは

IPoEは、IP over Ethrnetの略称で、プロバイダを経由せずに接続するので、PPPoEのような認証の必要がなく、対応回線やプロバイダを契約すれば、対応ルーターを設置するだけでインターネット接続が可能になります。


PPPoEとIPoEの違い4つ!速度はどっちが速いかなど全てを比較! | ネットサバイブル (netsurbible.com)


PPPoEとの違いは、IPoEの方が、PPPoEよりも設定が簡単で、さらに通信速度が速い状態を維持してくれます。

2. その他のデータリンク

イーサネット、無線通信、PPP以外にも、いくつもデータリンクがあります。

その他のデータリンクについても学んでいきます。

2-1. ATM

ATM(Asynchronous Transfer Mode)とは、通信する上での約束事の1つで、1本の回線を複数の仮想回線に分割し、そこを流すデータは全部で53バイト(ヘッダ5オクテット+データ48オクテット)のセルと呼ばれる単位で処理しています。

回線の占有時間を短くすることで大容量のデータを効率よく送ることができるようにしています。


ATMはコネクション指向のデータリンクで、通信する前に必ず通信回線の設定が必要です。

ATMにはイーサネットやFDDIのように送信権の制御がないため、好きな時に好きなだけデータを流すことができます。しかしこのような状態では、大量のデータが流れた時に輻輳状態になってしまうことを防ぐために、帯域を細かく制御する機能が備えられています。


※輻輳とは、ネットワークが非常に混雑して、ルーターやスイッチがパケットやセルの処理をしきれなくった状態のことをさします。

処理しきれなくなったパケットやセルは破壊されます。


ATMネットワーク


2-10. iSCSI

アイスカジーと読みます。


パーソナルコンピュータなどにハードディスクを接続するためのSCSIプロトコルをTCP/IP上で使用する規格です。

イーサネットのインフラが使用できるので低価格でストレージネットワークを構築することができます。

また、データの送受信は、SCSIのコマンドとデータをIPパケットに包含して行います。

これによりネットワーク上に直結された大規模ハードディスクを利用することができるようになりました。

2-11. InfiniBand

大規模システムにおけるコンピュータの接続や、スーパーコンピュータ内部の計算ノード間の接続などに用いられる超高速で信頼性が高いインターフェースです。

さらに低遅延という特徴もあります。

2Gbps〜数100Gbpsに及ぶ伝送速度を実現しています。

2-12. DOCSIS

ドクシスと読みます。


ケーブルテレビ(CATV)でデータ通信を行うための業界標準規格で、業界団体のMCNSが策定しました。

ケーブルテレビの同軸ケーブルにケーブルモデムを接続し、イーサネットとの変換を行うための仕様を標準化しています。

2-13. 高速PLC(高速電力線搬送通信)

家庭内やオフィス内にある従来の電力線を使った通信で、数MHz〜数10MHzの帯域を使い、数10Mbps〜200Mbpsの伝送速度を実現しています。

新たにLANを配線しなくてもいい点が魅力なのですが、もともと使う予定ではなかったものを使用するため、電波の漏洩が懸念されており、屋内での利用に限定されています。

2-2. POS

POSは、Packet over SDH/SONETの略称です。

パケットを、ATM(従来の方法 IP over ATM)を使わずに、デジタル信号を光ファイバーでやり取りするための物理層の規格であるSDH(SONET)上で通信を行うためのプロトコルになります。

SDHは、電話回線や専有線などで、信頼性の高い光伝送ネットワークとして広く使われています。

2-3. FDDI

FDDIは、Fiber Distributed Data Interfaceの略称です。


伝送媒体に光ファイバーやツイストペアケーブルを用いて、最高100Mbpsの伝送速度を実現可能なLAN規格の1つで1980〜90年代に構内の基幹ネットワークや広域ネットワークで用いられました。

アクセス制御方式として、トークンパッシング方式を利用しています。

トークンパッシングは、ネットワークが混雑した時の輻輳に強いという特徴があります。

FDDIでは、各ステーションは光ファイバーでリンク型に接続されます。

リングが切れて通信できなくなることを防ぐために、2重リングで構成しています。

2重リングに属するステーションをDAS、1重リングに属するステーションをSASといいます。

現在は、高速LANとしてギガビットイーサネットなどが使われているため、FDDIは使われなくなってきています。


FDDIネットワーク


2-4. Token Ring

Token RingはIBMによって開発されたトークンパッシング方式のLANで、4Mbpsまたは16Mbpsのデータ伝送速度を実現します。

Token Ringを発展させたものがFDDIになります。

価格が下がらない、使っているベンダが少ないという点からあまり普及しませんでした。

2-5. 100VG‐AnyLAN

100VG‐AnyLANは、IEEE802.12で標準化されたプロトコルで、VGはVoice Gradeの略です。

フレームのフォーマットはイーサネットとToken Ringに対応しており、UTOケーブルで100Mbpsの速度を実現します。

通信方式は、トークンパッシング方式の拡張版であるデマンドプライオリティ方式が採用されており、スイッチが送信権の制御を行います。


その後、イーサネット(100BASE-TX)の普及により、ほとんど使われなくなりました。

2-6. ファイバーチャネル

高速なデータチャネルを実現するデータリンクで、周辺機器を接続するバスに近い仕組みになっていて、133Mbps〜4Gbpsの伝送速度を実現します。

サーバーと複数のストレージを高速で接続するSAN(Storage Area Network)を構築するためのデータリンクとして利用されています。

2-7. HIPPI

HIPPIは800Mbpsまたは1.6Gbpsのデータ伝送速度を実現しています。

最大ケーブルの長さは25mでスーパーコンピュータ同士の接続に利用されます。


スーパーコンピュータ


スーパーコンピュータ「不老」の概要と「富岳」型Type I サブシステム | 情報玉手箱 (nagoya-u.ac.jp)


2-8. IEEE1394

FireWire、i.Linkとも呼ばれています。

AV機器を結ぶ家庭用のLANで使用されています。

100〜800Mbps以上のデータ伝送速度を実現します。

2-9. HDMI

High-Definition Multimedia Interfaceの略で、1つのケーブルで高品質な映像や音声をデジタル伝送できる規格になります。

パソコンとディスプレイの接続にも使用されます。

2009年に公開されたバージョン1.4からイーサネットのフレームを伝送する規格が追加され、HDMIを使用してTCP/IPによる通信が可能になりました。


144Hzモニターに最適なケーブル[2020ガイド]-マンドウィン (mundowin.com)


3. まとめ

データリンクにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が少しずつ違っていて、今ではあまり使われなくなったものについても学ぶことができました。

時代の変化とともに伝送速度が速くなったり、不具合を起こさないような工夫があったりしたのが分かりました。