ITパスポート試験は、国家資格である情報処理技術者試験の12区分の1つであり、初級レベル(レベル1)に位置づけられています。
本記事では、ITパスポート試験の過去問の解説をしていきます。
ITパスポート試験過去問3
1. ストラテジ系の問題
X社のシステム部門に所属しているA氏は、自社の会計システムの再構築プロジェクトの責任者を任された。
システムの再構築を、企画プロセス、要件定義プロセス、開発プロセスの順で進めるとき、企画プロセスにおけるシステム化計画の立案作業でA氏が実施する作業として、適切なものはどれか。
ア、画面、帳票などのユーザーインターフェース要件を確定する。
イ、システムに対する制約条件や業務要件について、関係者の合意を得る。
ウ、提案依頼書を作成し、ベンダー企業に提案書の提出を求める。
エ、品質、コスト、納期の目標値と優先順位を設定する。
答え:エ
企画プロセスは、経営目標や事業目標を達成するためのシステムへの要件定義と方針を確認し、システムを実現するための実施計画を得るプロセスです。
この企画プロセス内で実施されるシステム化計画の立案では18のタスクが挙げられていますが、このうちの1つに「プロジェクトの目標設定」がありプロジェクトの判断基準となる品質、コスト、納期の目標値と優先順位を設定することになっています。
よって答えは「エ」。
2. ストラテジ系の問題
社内の決裁申請手続きの迅速化と省力化を狙いとして導入するシステムはどれか。
ア、MRPシステム
イ、POSシステム
ウ、SFAシステム
エ、ワークフローシステム
答え:エ
ワークフローシステムは、電子化された申請書や通知書をあらかじめ決められた作業手順(決裁ルート)に従い、集配信し(デリバリーする)、決裁処理を行うシステムです。
稟議・報告書・届出申請の承認手続きを電子化することで、スピード向上、業務効率化、内部統制強化を図ることが可能となります。
MRPシステムは、部品表と生産計画をもとに必要な資材の所要量を求め、これを基準に在庫、発注、納入の管理を支援するシステムです。
POSシステムは、販売した情報をリアルタイムで情報システムに取り込む販売管理システムです。
SFAシステムは、営業活動にモバイル技術やインターネット技術といったITを活用して、営業の質と効率を高め売上や利益の増加につなげようとする仕組み、またはそのシステムのことです。
3. マネジメント系の問題
ITガバナンスについて記述したものはどれか。
ア、企業が、ITの企画、導入、運営及び活用を行うにあたり、関係者を含む全ての活動を適正に統制し、目指すべき姿に導く仕組みを組織に組み込むこと。
イ、企業を効率的に支える、IT運用の考え方、手法やプロセスなどについて様々な成功事例をまとめたもの。
ウ、業務改善または業務再構築のために、ITを最大限に利用して、これまでの仕事の流れを根本的に変え、コスト、品質、サービス及び納期の面で、顧客志向を徹底的に追求できるように業務プロセスを設計し直すこと。
エ、組織体として業務とシステムの改善を図るフレームワークであり、顧客ニーズをはじめとする社会環境やIT自体の変化に素早く対応できるよう、”全体最適”の観点から業務やシステムを改善するための仕組み。
答え:ア
iTガバナンスは、企業が競争優位性を構築するために、IT戦略の策定・実行をガイドし、あるべき方向へ導く組織能力であり、ITへの投資・効果・リスクを継続的に最適化する為の組織的な仕組みです。
経済産業省のITポータル内では「企業が、ITに関する企画・導入・運営および活用を行うにあたって、すべての活動、成果および関係者を適正に統制し、目指すべき姿へと導くための仕組みを組織に組み込むこと、または組み込まれた状態」と定義され、ITを活用することで組織力の統制力・統率力の向上が期待できるとしています。
イはITILに関する記述です。
ウはBPRに関する記述です。
エはエンタープライズアーキテクチャに関する記述です。
4. マネジメント系の問題
内部統制における相互けん制を働かせるための職務分掌の例として、適切なものはどれか。
ア、営業部門の申請書を経理部門が承認する。
イ、課長が不在となる間、課長補佐に承認権限を委譲する。
ウ、業務部門と監査部門を統合する。
エ、効率化を目的として、業務を複数部署で分担して実施する。
答え:ア
職務分掌とは、業務の担当者と承認者を分離するなど、それぞれの担当者間で適切な相互牽制が働くように役割分担や権威を決めることです。
内部統制において業務の適正さを保つ組織体制を築くための要素と位置づけられています。
5. テクノロジ系の問題
ネットワークを構成する機器であるルータの機能の説明として、適切なものはどれか。
ア、LANケーブル同士を接続し、ケーブルから受信した信号を増幅して他方のケーブルに送信する。
イ、異なるネットワークを相互接続し、パケットの中継を行う。
ウ、同一LAN内の機器を接続し、パケットの中継を行う。
エ、光ファイバのLANケーブルと銅線のLANケーブルを接続し、ケーブル上の信号を相互変換する。
答え:イ
アはリピータの機能を説明したものです。
イはルータの説明です。ルータは、異なるネットワークの境界に設置され、通過するパケットのIPアドレスを見てパケットを最適な経路に中継する通信装置です。
ウはブリッジの機能を説明したものです。
エは光メディアコンバータの機能を説明したものです。
6. テクノロジ系の問題
内外に宣言する最上位の情報セキュリティポリシーに記載することとして、最も適切なものはどれか。
ア、経営陣が情報セキュリティに取り組む姿勢
イ、情報資産を守るための具体的で詳細な手順
ウ、セキュリティ対策に掛ける費用
エ、守る対象とする具体的な個々の情報資産
答え:ア
情報セキュリティポリシーは、基本方針、対策基準、実施手順の3階層で構成されていることが一般的ですが、本問題では最上位の”最上位の情報セキュリティポリシー”としているので、一番上の基本方針の記載事項について問うているのと考えられます。
情報セキュリティの最上位に位置する文書は、組織の経営者が最終的な責任者となり、「情報セキュリティに本格的に取り組む」という姿勢を示し、情報セキュリティの目標と適応範囲、その目標を達成するために企業がとるべき行動を社内外に宣言するものです。
したがって「ア」の内容が適切です。
7. まとめ
いかがでしたでしょうか。
情報系の知識は高度なものが多いですが、がんばります。
時代に合わせて変化を遂げる情報技術、これをきちんと活用できる人材を育てていくことは社会全体から見ても大切なことであり、そうした人材のすそ野の広がりが、日本全体のIT活用能力を高めることに繋がります。
これからの日本は少子高齢化の時代に入り、国力を保つためには1人あたりの生産性が重要になると言われています。
小学校でプログラミング教育が必修化になったのも、このような時代背景が関係しています。
国民のIT能力が底上げされることで、普通の人でもプログラムを作ることやデータ分析を行えることが当たり前になり、日本経済全体の生産効率が自然に高まっていくということを国家的なねらいとしているわけです。
私もプログラムを作ったりデータ分析ができるITリテラシーのある普通の人間になりたいです。