マニュアル作成で心がけることとは

皆さんはシステム開発現場のマニュアルや仕様書などのドキュメントに対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

実際にシステム開発の現場で整備されていたマニュアルが、めちゃくちゃ役に立ったと考えているかたは、ごく少数なのではないでしょうか。

各プロジェクトで、エンジニアの入れ替わりが当たり前になった昨今では、業務マニュアルやシステムの操作マニュアルがない会社はないと言っても過言ではありません。

・分厚くて読む気がしない

・どこに何が書いてあるのか分かりにくい

・そもそも読んでも理解できない

・プロセスやトラブルの解決策が抜けがち

・書いてある内容が古い(アップデートされていない)


上記の内容はいずれも、マニュアルが風化する原因の1つです。

裏を返せば、マニュアルを作る側が、上記のような状態にならないように気をつけるべき項目とも考えることが出来ます。

実際、多くのシステム開発の現場で、マニュアルと実際に稼働しているシステムとの情報が乖離しており、マニュアルはストレージを圧迫する邪魔な存在。

だと認識されているケースが多いです。


今回の記事では、システムの操作マニュアルに関して、みなさんが実際にマニュアルを作成する場合に、分かりやすく使いやすいマニュアルを作るために心がけるべき5つのポイントについて解説していこうと思います。

1. 全体像・目的が把握できるフォーマット


システムの操作時には、「こういう場合にはこの作業を行う」といったように、多岐にわたる分岐が発生します。

そのため、操作マニュアルに記載されている作業内容が、どのパターンのときに、何のためにやることなのか、分からなくなることが多いのが現状です。


そこで、先に全体のシステムフロー図(概要)を作成し、そこに分岐とアクションを記載しておくことで、全体の流れと操作の位置づけを理解することができます。

その際、アクションごとに番号を振って、その番号に沿って作業手順書を作成していけば、フロー図が目次の役目を果たし、利用者がより理解しやすくなります。


作業手順書に記載する項目には、アクション番号とアクション名、作業タイミング、作業者、作業の目的、前提条件、事後条件、参照資料、関連アクション番号などを設け、実際の作業手順と使用するシステムのメニュー名、作業上の注意事項を1セットとしてフォーマット化しておくと便利です。


また、フォーマットを用意しておくことで他事業部への横展開で合ったり、クライアントへの商品説明にも使用することが出来るので、幅広いシーンで活用することが可能となります。

2. 検索性を高める工夫をする

ホームページの更新手順など、上記で開設したような全体のフロー図を作成するような操作マニュアルではない場合でも、検索性を高めるための目次は必須です。

目次があることで、時間効率も向上させることが出来ます。


なお、マニュアルは誰が見てもわかりやすいように色々な情報を盛り込んでいるので、とにかくボリュームが増えがちですが、必ずしも一冊にまとめる必要はありません。

読み手が読みたくなくなるような分厚いマニュアルとならないよう、カテゴリ別に分冊化していくなど、読み手に取っての使いやすさに配慮しましょう。


また、「全体像・目的が把握できるフォーマット」でも少し触れましたが、別のマニュアルに詳しく書いてある内容であれば、そのアクション番号を記載しておく、関連作業は近接ページに配置するなど、目次以外でも検索性を高める工夫を施しておくことで、マニュアルを読む心理的ハードルを下げることも可能となります。

この内容を調べたい人は、どのようなキーワードで利用者がマニュアルを参照するのか、想像しながら作成しましょう。

3. ユーザーが使いやすくなる意識を


様々な操作方法や手順をテキストだけで書く、説明が冗長で文章量が多い、専門用語を多用するといった作り方はシステム開発の現場では非常に多いですが、それでは利用者にとって分かりやすいマニュアルとは到底言えません。

言葉での説明に加えて画面キャプチャなどを利用し、実際に操作しているときと同じイメージで操作を行うことが出来るマニュアル作りを心がける必要があります。

直観的に何をすべきかが分かるマニュアルは、知識のない利用者に対しても安心感を与えることができます。


最近では、テキスト形式のマニュアルに加えて、動画によるマニュアルを導入するケースも増えています。

4. トラブルや疑問点を事前に想定しておく


トラブルや疑問点を事前に予測できる範囲で洗い出し、WEBサイトなどでもよく見かけるQ&Aを、マニュアルにも盛り込んでおきましょう。


トラブルになりそうな操作については、作業手順書のフォーマットに注意事項の記載を用意しておき、そこでカバーできるような作り方を意識することで、問い合わせを減らし時間効率の向上にもつなげることが可能です。


システムの運用上、複雑な操作や外部のシステムと連携するケースでは、マニュアルの参照頻度が多くなります。

例えば、作業を間違えてしまった場合のリカバリ方法なども掲載しておくと、利用者にとっては安心することが出来ます。

5. メンテナンス性を意識した作り方で風化を防ぐ


これまで挙げたことは、1度マニュアルを作成したらそれで終了、というものではありません。

システムの更新時や機能追加・改修があった場合は、当然のようにマニュアルも併せて更新する必要があります。

そうでないと、実際のシステムとマニュアルの中身が乖離し、利用者は不信感を持つようになります。


もし、作成したマニュアルが年間を通じて使用するマニュアルであれば、利用者が気づいたときにマニュアル内にコメントを残していただくことで、年に一度集約するといった方法も効果的です。

先述したようにマニュアルの更新を行わないでいると、次第に現実のシステムとマニュアル上のシステムに乖離が生じてしまい、マニュアルを見ても現状と同じ画面が見つからない、といったことにもなりかねません。


不要なコメント機能や図形を多用しないシンプルなフォーマットでマニュアルを作成し、更新などがあった際に簡単に差し替えができるよう、作業ごとにページを区切るなどの工夫を施し、更新作業を軽減できるように工夫しましょう。

6. まとめ

今回は、システム開発の現場でマニュアルを作成する場合のポイントについて細かく解説していきました。

このマニュアルを作成するポイントについては、システム開発の現場以外の職業などでも活用できるテクニックではないでしょうか。


上記でも解説したように、昨今の社員の入れ替わりが激しい世の中では、誰であっても操作が出来る・対応が出来るなどを意識したマニュアル作りを意識することで、属人性の低い組織作りを行うことが可能となります。

属人性が低い。つまり、ベテラン社員であっても、新入社員であっても同様のクオリティを発揮できるという意味です。


この意識を持つことで、システム開発などのIT業界以外でも幅広い対応力を発揮することが出来るので、是非マニュアル作りと併せて覚えておいていただきたい考え方です。


また、今回は、テキストベースのマニュアル作りを中心に解説させて頂きましたが、上記の考え方はテキストベースでなくとも、動画ベースのマニュアル作りにも応用することが可能です。

誰が見ても同様の結果を得られるよう、日々のマニュアル作りを進めて頂ければ幸いです。