業務でPLMのシステムに関わることになったものの、一切経験のない状態でしたので、業務に入る前に頭に入れておきたいPLMについての知識をまとめてみようかと思います。
【PLM】業務効率化に必要とされるPLMについて まとめ
1. PLMとは?
PLMとは「Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理」の略語です。
製品の企画から廃棄までのライフサイクルにおける情報を社内で管理し、共有を行うことで業務の効率化や利益拡大、開発コストの削減を図る仕組みのことです。
製造業では、利益を最大化するために「QCD」が重視されています。
QCDとは、Quality:品質・Cost:コスト・Delivery:納期の頭文字をとったもので、製造業において重要な要素です。
競争の激化やコンプライアンス遵守など環境の変化に伴い、良い製品を低コストで製造し、迅速に市場に導入するよう求められています。
そのためには、製品ライフルサイクル全体を管理する必要があり、設計・開発部門や製造部門など、各部署が連携しなければなりません。
そこで誕生したのがPLMです。PLMには、ポートフォリオや要件管理、CADやBOMデータの管理、取引先情報管理や製品データ・サービス部品の管理など、製品ライフサイクル全体を管理する機能が搭載されています。
これにより、開発力や企業競争力の強化が可能になり、QCDの向上につながるでしょう。
デジタル技術やIoT技術の進歩、DX化にともなってPLMはITシステム化され、製造業では様々な機能を提供するPLMシステムが登場しています。
PLMシステムを導入することで、製品ライフサイクル管理の最適化や効率化が期待でき、昨今ではPLMの実践において不可欠な存在です。
2. PLMの主な機能は?
PLMは製品ライフサイクルのそれぞれについて活用できる機能を持ちます。
製品ライフサイクルとは、製品の企画、設計、原材料や部品の調達、生産・製造、市場投入・販売、保守、販売終了までの一連のプロセスを意味します。
2-1. 企画・開発
企画・開発の段階で、市場や顧客のニーズを受けて自社で製品化が可能であるかを判断し、プロジェクトが発足します。
PLMシステムには、ポートフォリオ管理機能や要件管理機能などが搭載されており、ポートフォリオを最適化し、要件の定義や検証を効率化できます。
2-2. 設計
設計の段階では、製品の外観や、製品に搭載する機能などの各種仕様を決定します。
PLMシステムは、製品のモデリングやシミュレーション、データ解析、開発スケジュール・エンジニアリングBOM・原価・CADデータ・3D(3次元)データの管理などの機能を備えています。
2-3. 調達
取引先管理や購買部品管理、サプライヤー協業環境構築など、製品の生産・開発に必要な原材料や部品の調達に活用できる機能を備えています。
2-4. 生産・製造
PLMシステムが持つ、型の加工・設備の設計・製造BOM・工場ラインのシミュレーション、電子作業指示書の機能が活用できます。
これらの機能を活用することで、製品の生産・製造プロセスにおける遅滞やミス、製品不良の発生を防ぐことにつながります。
2-5. 保守
部品管理やサービス管理、修理管理などを、デジタル化されたITシステムによって管理することにより、迅速かつ正確な対応が可能となります。
3. PLMを導入するメリットは?
PLMシステムを導入することによるメリットを具体的にいくつかご紹介します。
・業務効率化
・製品の品質向上
・開発コストの削減
・リードタイム短縮
3-1. 業務効率化
社内に蓄積された製品ライフサイクルのデータを適切に管理することで、業務の改善が可能です。
具体的には、IT化されたPLMのプラットフォームを活用し、資料や図面などのドキュメント管理をオンラインで行ったり、メールやチャットツールなどを利用して各所に配布したり、サーバー上で必要なデータを探したりといった業務のデジタル化が実現します。
これまで紙ベースで行っていた作業を電子化することで工数を削減できるほか、情報共有が迅速化し、社内連携の強化にもつながるでしょう。
また、PLMシステムの中には、ERP(企業資源計画)やSCM(サプライチェーン・マネジメント)、MES(製造実行システム)で利用される他のソフトウェアやシステムと統合できるものもあります。
システムの統合によって、データの受け渡しや流用、さらなる活用も期待できます。
3-2. 製品の品質向上
PLMはシステムでは、高品質の製品を効率的に製造したいというニーズを、情報の一元管理によって実現します。
製品の仕様や生産環境といった情報がすべてデータ管理されているため、細かいカスタマイズや仕様変更にもスムーズかつ迅速に対応できます。
市場でのフィードバックを経て製品の改善を繰り返し実施することで、品質向上も期待できるでしょう。
3-3. 開発コストの削減
製品開発時の企画書や設計書、仕様書などをPDFなどのデジタルデータに変換して管理しやすくなるほか、シミュレーションやモデリングデータの解析もPLMシステムによって容易になり、これまでアナログで行っていた作業の工数や費用の削減につながります。
また従来では、設計変更を行うときに業務の後戻りが多く時間がかかっていました。
PLMでは業務に必要なデータを必要な形で提供しているため、作業のフェーズに応じて適切なフィードバックが行えます。
設計変更の際に他部門からの的確で素早いフィードバックがあれば、業務の後戻り時間を短縮できます。
その他、業務効率化と被る部分もありますが、効率化を図ることで開発コストの削減にもつながるということです。
3-4. リードタイム短縮
リードタイムとは、工程や作業の始めから終わりまでにかかる所要期間のことを指します。
「製品の開発が終わり、生産・販売にこぎつける頃には、すでに市場の状況が変化し適切なタイミングではなかった」「投資回収期間が早まり、製品開発にかかった費用を回収できなかった」など、現代ではユーザーの嗜好の多様化が進み、販売や廃棄のタイミングの把握が困難になってきていることによる失敗がありました。
PLMシステムを導入することにより、開発から廃棄までの業務プロセスを3段階に分けて、アイデアの創始・設計の段階から製品の生産・販売・廃棄にかかる期間を把握して管理し、「早期の販売により先行利益が必須なのか」「早期の廃棄をしなければ採算があわなくなるのか」を見極めることが可能です。
4. まとめ
今回はPLMシステムについてをまとめてみました。
昨今は企業のグローバル化が進んだことにより、市場の競争がより激化していると言われています。
また、物価の高騰も大きな課題の一つです。
開発スピードをあげ、コストを削減しつつ、品質や顧客満足度も向上しなければならない非常に難しい状況のなか、各企業は競争力を高める努力をしているでしょう。
PLMシステムについての関連知識や技術を身につけておけば、エンジニアとしてステップアップできること間違いなしです。
今回挙げたPLMシステムの機能やメリットに関しては、PLMシステムを導入する業界によってどこを重要視するのか、という点も変わってきます。
顧客の求める機能を搭載したPLMシステムの開発を行うことによって、顧客や業界から信頼されるエンジニアとして成長できればよいと思います。